第59号                                       2001,6,25

激雨(はげあめ)
 梅雨の大雨が降ると、毎年ここ高家田んぼは大水になって浸かってしまいます。そんなに低いところではないのですが、鹿児島本線がちょうどダムの堤防のはたらきをして水がはけにくいのです。
 田植えしたばかりの小さな苗が傷んでしまうので、排水ポンプを回し田んぼの水をくみ出します。雨が激しいときは二晩も徹夜作業をすることもあります。
     
 我々にとっては厄介な激雨なのですが、これを待っている者がいます。
 魚たちです。コイ、フナ、ナマズ、ドジョウなどが産卵のため一斉に田んぼにあがってきます。コイなど40〜50pクラスものが、多いときは100匹以上も上がってきます。

 ところで、魚たちはなぜ田んぼに上がって産卵するのか知っていますか。
 夏場の田んぼに入ったことのある人は経験があると思いますが、田んぼの水はお風呂のようにとっても温かいのです。この温度が卵の孵化には必要なのです。それに、プランクトンやイトミミズなどの餌がとても豊富なのです。
 大昔、まだあちこちに湿原がたくさんあった頃には湿原の浅瀬で産卵していたのでしょうが、それが無くなつてからというもの、彼らはずっと田んぼで生まれてきていたのです。そのほか、カエルやトンボなども田んぼで生まれます。田んぼの横の水路ではタナゴたちが生まれます。人が作り出した田んぼや水路という環境を巧みに利用して生きているのです。 

 子供の頃、水路で魚釣りをして遊んだ人は多いでしょう。そこにフナがいるのは当たり前のように思っていたけれど、よく考えてみると、彼らは百姓のする稲作と共に生きてきたのです。

 いま米は経済競争の中に巻き込まれていますが、もしも競争に負けて、田んぼで米作りを止めてしまったら、そこで生まれ育っている彼らもまた一緒に絶滅してしまう運命なのです。
 有機農業をしている我が家の7月の田んぼの中は、そんなことを知らない稚魚やオタマジャクシその他たくさんの命であふれます。

浅川幼稚園の田植え
 6月11日、浅川幼稚園の約40人の園児たちを招いて田植えをしました。去年に引き続き2年目ですが、園児もお母さんもほとんど初めてです。
 7畝(せ)(210坪)程の田んぼは、子供たちにはちょっと広いかなと思ったのですが、みんな泥んこになりながらも上手に植えることができました。
 はじめての田んぼの中にキャーキャーと歓声を上げて大はしゃぎです。、でもお母さんたちのはしゃぎ声の方が大きかったかな。
 植えた稲は「滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)」といって、日本一美味しいと言われる餅米です。秋には、稲刈りと餅つきをする予定です。

     

遺伝子組み換え汚染の恐怖
 この新しい科学技術は、核や石油化学汚染などの歴史上のいかなる科学技術による災害よりも深刻な脅威になってくるだろうと言われています。それはこの技術が、人間を含む生物の生態系の根幹を揺るがす技術だからです。

 そしてこの遺伝子組み換えの合成生物を作り出す技術は誰でもできるほど簡単な技術となってきたのです。現に文部省は、アメリカに先行された技術に追いつくために中学・高校での組み換え実験を奨励しているくらいです。
 誰もが興味本位のおもしろさで、新しい合成生物を作り出すようになっては、倫理的な歯止めもきかなくなってくるでしょう。

 新たに生み出されたこれら合成生物は一代だけで死滅してしまうわけではありません。みな生殖能力があり、ずっと子孫を残していきます。
 より強い合成生物の出現で、人間を含め在来種は絶滅に追い込まれたり、雑種化して遺伝子汚染を受けたりすることになります。トウモロコシや油菜科の植物ではすでに現実化しています。

 我々は、自然界の微妙なバランスの上に生きていることを謙虚に受け止め、遺伝子組み換え技術を即時禁止しなければ、取り返しのつかない未来が待ち受けていることは、誰の目にも容易に想像ができます。

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